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支える側が支えられ 生かされていく(認知症の母が教えてくれたこと)

これは藤川幸之助さんという方が、
認知症の母親の介護に20年以上携わる中から紡がれた詩集です。

エピローグの中に、

24年間認知症の母の命に向き合い、この絆の結び直しをしながら、なんと多くの問いを自分に投げかけてきたことか。親とは何か?人を愛するとは何か?生きるとは何か?死とは?苦しみとは?悲しみとは?つまりこれは、わたしに対する「人生からの問い」でもあった。

とあるように、
この中に収められた詩一扁一扁を涙ながらに読みながら、
わたし自身への問いでもあると感じました。

徘徊と笑うなかれ

徘徊と笑うなかれ
母さん、あなたの中で
あなたの世界が広がっている
あなたの思い出がこの今になって
あの日のあの夕日の道が
今日この足下の道になって
あなたはその思い出の中を
延々と歩いている
手をつないでいる私は
父さんですか?
幼い頃の私ですか?
それとも私の知らない恋人ですか

妄想と言うなかれ
母さん、あなたの中で
あなたの時間が流れている
過去と今とが混ざり合って
あの日のあの若いあなたが
今日ここに凛々しく立って
あなたはその思い出の中で
愛おしそうに人形を抱いている
抱いているのは
兄ですか
私ですか
それとも幼くして死んだ姉ですか

徘徊と笑うなかれ
妄想と笑うなかれ
あなたの心が今を感じている

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何度も転んだ
何度も立ち上がった
そのたびごとに地団駄踏んで
踏み固めてきた私の道は
あの山を超え
私まだ見たこともない私に出会い
あの海に行き着き
人の悲しみの深さを知った

顔に当たる風の強さで感じるのだ
血のにじむ膝の痛みで感じるのだ
立ち上がり歩み出す私の一歩が
転ぶごとに力強く大きくなっていることを
あの悲しみから踏み出したその一歩が
この喜びへとつながっていることを

私をつまずかせた石ころの中に
私の明るい未来は潜んでいる
何度も何度も立ち上がり
大粒の汗をしみ込ませて
道が私の道になっていく

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